2019年2月18日月曜日

不倫小説読み比べ。

こんにちは、クリボーです。

三連休、野暮用をいくつか入れてしまったのでどこにも行かずのんびり過ごしました。
雪のちらつく中子どもと本屋さんに行って、お互い好きな本を買ってお茶を飲みながら読書。
私は、最近話題の本を2冊。

最近恋に飢えているアラフォー女子に、とってもオススメの本です。

島本理生さんの新作「あなたの愛人の名前は」。
すれ違う大人の恋愛を描く全六編の作品集。



それから、井上荒野さんの新作「あちらにいる鬼」。
自分の父である井上光晴と愛人の瀬戸内寂聴と、自分の母をモデルにしたモデル小説。



偶然にもどちらも不倫がモチーフとして出てくるお話で、それぞれ面白かったのですが、私の好みをいうと、断然「あちらにいる鬼」に軍配。

「あなたの愛人の名前は」は、「すれ違う大人の恋愛」の話なので、どうしても人間関係が淡白。(短編ですしね)
「あちらにいる鬼」は、主人公の3人が何度も何度もしっかり絡み合って、それでも人間が完全に交わることはないという切なさをはらんでいて、重たい。

文章自体も、「あなたの愛人の名前は」は場面と描写がちぐはぐというか、あまり意味もなく食べ物の細かい描写が出てきたりして、「この人食いしん坊なのかな?」というような雑念が湧いてしまう(私が注意力散漫なのかもしれませんが)。

一方、「あちらにいる鬼」は、食べ物の描写が細かいときには、登場人物の人となりを表すような仕掛けがついていて、全然邪魔にならない。
途中から、この本は瀬戸内寂聴さんが書いているんだったっけ?と思ってしまうような、リアルさ。
井上光晴をモデルにした「白木篤郎」は、才能はあるけれども学閥も文壇閥も希薄で、コンプレックスの塊で、孤独。
文壇バーで、主流派グループとたまたま出くわした時の気まずさ。

大人になってから恋愛すると、若い時のように相手のことを丸ごと好きになるってことはあまりなくて、相手のバックグラウンドも社会的地位も金払いも本心も透けて見えて、それをもう一人の自分が冷静に眺めていたりするものだと思うけれど、それを娘の立場で、いや娘の立場を捨てて、これだけ冷徹に描けるなんて。

白木の娘(要は自分)のことも、その才能を過小評価するわけでもなく、過大評価するわけでもなく、1ミリも恥ずかしがらずにただ淡々と描写している。
井上荒野さんは、ほんまものの作家さんなんだなと思いました。

不倫小説なのに、とにかく読後感がとてもよかった。
なぜでしょう。今TVで観る瀬戸内寂聴さんが爽やかだからかも。それとも作者のこの冷徹な視線の影響?

***

井上荒野さんの本では、「潤一」という本もあるのですが、主人公の「潤一」くんも井上光晴さんを彷彿とさせる(というかある意味モデル)そうです。
こちらの潤一くんは、割と飄々としていて捉えどころがなくて、どちらかといえば「あなたの愛人の名前は」のように、すれ違う人。



いつの時代も、若い人ってすれ違うんですかね。

このころの井上荒野さんは髪が長くてソバージュで、目線も鋭くて、なんだか怖そうなお姉さんといった感じでしたが、今はとても優しそう。

「あちらにいる鬼」についての作者インタビューも面白いので、オススメです!

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